落語家の階級 見習いと前座

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「落語家の階級」シリーズ

  1. 見習いと前座 ← この記事
  2. 二つ目(ふたつめ)
  3. 真打(しんうち)

落語の世界にも、サラリーマン同様に年数と実績に応じた階級があります。

テレビで見るお笑い芸人さんはプロダクションに所属したり、養成所で勉強したりしますが、落語家さんは違います。師匠に弟子入りして、修行の日々を積み重ねるところからすべてが始まります。

この記事では、落語家の第一歩である「見習い」と「前座」について紹介します。華やかな高座の裏にある、知られざる修行の世界をのぞいてみましょう。

この記事でわかること

  1. 落語家になるには?弟子入りの仕組み
  2. 見習い時代にやること
  3. 前座になると何が変わる?
  4. 前座の仕事:寄席での一日
  5. 落語の稽古はどうやって覚えるのか
  6. 前座の給料と生活の現実
  7. 前座の期間はどのくらいかかる?

落語家になるには?弟子入りの仕組み

落語家になるには、真打の落語家さんに弟子入りする必要があります。弟子を取ることができるのは真打だけと決まっているため、最初の一歩は「どの師匠に弟子入りするか」を決めることです。

弟子入りの基本

  • 弟子入りできるのは真打の落語家のみに許された権限
  • 落語協会は入門の年齢制限を30歳までとしている
  • 師匠に許可されて初めて「見習い」としてスタートできる
  • 弟子入りしても、すぐに落語家になれるわけではない

師匠から弟子入りを許可されると「見習い(みならい)」になります。ただし、これはまだ落語家へのスタートラインに立ったわけですらありません。見習いは、落語家への入り口に手をかけた段階です。

見習い時代にやること

見習いになると、毎日師匠のところへ出向き、さまざまな用をこなします。以前は半年から1年ほど師匠の家に住み込んで、身の回りの世話をしながら稽古をつけてもらうのが一般的でした。最近は自宅から通いながら修行するスタイルも増えてきました。

見習い時代の主な仕事

  • 師匠の身の回りの世話全般
  • 着物のたたみ方を覚える
  • 太鼓を叩く練習をする
  • 独演会などへのカバン持ちとして師匠のお供をする
  • 師匠の落語を聴いて耳を慣らす

見習い期間は半年から1年ほど。この期間をこなして師匠から許可が下りると、初めて名前をいただき「前座」になれます。

寄席の楽屋に出入りできるようになるのも、前座になってからです。見習いのうちは楽屋にも入れないのです。

前座になると何が変わる?

前座になると、寄席への出入りが許可されます。そして、いよいよ高座に上がれるようになります。ただし、毎日寄席に行っても高座に上がれるわけではありません。楽屋での仕事が山積みだからです。

前座になって変わること

  • 寄席の楽屋に出入りできるようになる
  • 高座に上がれるようになる(開口一番を務める)
  • 寄席の裏方仕事全般を担うようになる
  • 師匠の独演会などで前座として出演できるようになる

また、前座になると「前座名」という芸名をいただきます。師匠からもらうこの名前が、落語家としての第一歩の証です。

前座の仕事:寄席での一日

前座さんの寄席での仕事は、開演前から始まります。師匠方を出迎え、お茶を運び、出番を終えた師匠たちの帰り支度を手伝い、出囃子の太鼓を叩く。その合間に、こっそりと師匠たちの落語を聞きながら勉強もします。

前座なりたての頃は、楽屋での仕事をこなすだけで精一杯です。

立前座(たてまえざ)という役割

前座にもベテランと新人がいます。キャリアの長い前座のことを「立前座(たてまえざ)」と呼びます。年齢や落語の上手さは関係なく、前座としての経験年数が長いという意味です。

立前座の大切な仕事「帳面つけ」

  • 高座に上がった落語家さんが話し始めたら、演目を聴き取って帳面に書き込む
  • 書いた帳面を次に出番の師匠たちに見せる
  • 師匠たちはそれを見て、前の人と演目が被らないよう今日の噺を決める
  • 演目がわからない時は下座さん(三味線担当)に聞いて確認する

出演する落語家さんは事前にわかっていても、どんな噺をするかは当日まで誰もわからないのです。だからこの帳面つけが寄席の進行を支える重要な仕事になっています。

数十年前は前座が1人しかいない時もあったそうです。太鼓を叩きながら緞帳(どんちょう)の上げ下げもこなし、ひどいときは二つ目さんが前座の仕事を代わりにやることもあったとか。毎日が修行の日々ですね。

落語の稽古はどうやって覚えるのか

前座時代の稽古は、師匠からつけてもらいます。以前は「三遍稽古(さんべんげいこ)」と言って、師匠が同じ噺を3回やって見せ、それを弟子が覚えて師匠の前で演じ、OKが出たら高座にかけられる、という流れが基本でした。

最近はCDを渡されて覚えたり、ICレコーダーで録音して聴き覚えたりする方法も使われています。ただし、覚えたら師匠の前で演じて許可をもらうというプロセスは変わりません。師匠から「高座にかけていいよ」と言われて初めて、お客さんの前でその噺を演じることができます。

前座時代に最低でも20〜30個の噺を覚えると言われています。ひとつひとつ師匠の許可をもらいながら、噺のレパートリーを積み上げていくのです。

前座の給料と生活の現実

前座さんが高座に上がっても、入場料(木戸銭)に前座の分は含まれていません。プログラムにも名前は載りません。つまり、前座の出演料はゼロです。

前座時代の生活の現実

  • 出演料はゼロ。師匠からのお小遣い程度が収入のすべて
  • アルバイトは原則禁止(「稽古をしなさい」と言われる)
  • この状態が2〜5年続く
  • 家族や周囲の理解と経済的な備えが不可欠

落語家になるにはある程度の貯えと、周りの理解がないとなかなか難しい職業です。それでも落語の世界に飛び込む人がいるのは、それだけ落語という芸が人を惹きつけるからでしょう。

前座さんの落語を観るときは、そういう背景を少し思い浮かべてみてください。つまらなくても料金をいただいていないのですから、温かく見守ってあげましょう。いつか独演会のチケットが取れない人気落語家に化けるかもしれません。

前座の期間はどのくらいかかる?

前座の期間は2年から5年が目安です。師匠の独演会や寄席の開口一番を務めながら、着実に噺のレパートリーを増やし、実力を積み上げていきます。

階級 期間の目安 給料
見習い 半年〜1年 なし(お小遣い程度)
前座 2〜5年 なし(お小遣い程度)
二つ目 5〜10年 出演料あり(わずか)
真打 生涯現役も 出演料(格により大きく異なる)

独演会のアンケートに前座さんへのメッセージを書いてあげると、とても励みになるそうです。気になる前座さんや二つ目さんを見つけたら、ぜひ一言書いてあげてください。

まとめ

落語家になるには何年もかかります。それでも師匠は、自分の芸を惜しみなく弟子に教えます。落語家は世襲ではありませんが、弟子入りすると親子同然の関係になり、礼儀作法から落語の噺まですべてを師匠から受け継ぎます。

こうした日々の修行を耐え抜いた先に、二つ目、そして真打が待っています。

寄席に出かけたら、ぜひ修行中の前座さんの落語も聴いてみてください。荒削りだからこそ見える、落語家の原石の輝きがあります。

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