公演レポート

柳家喬太郎 落語生活30周年記念落語会に行ってきた

スズナリ

柳家喬太郎が落語生活30周年記念として、2019年11月1日から11月30日まで、下北沢「ザ・スズナリ」で日替わりゲストを迎えて連日公演されました。

全公演に行きたいのですが、それは無理なので26日の公演に行ってきました。

Youtubeでは聴くことができない、公演ならではの話しを聴くことができ、とてもよかったです。

今回のゲストは、柳家花緑さんでした。小さん師匠の弟子である花緑さんと兄弟弟子のさん喬さんの弟子の喬太郎さん。前座・二つ目の頃からの間柄。

今回、喬太郎さんの演目は、小さん師匠の十八番という事もあり、花緑さんは非常によろこんでいたようです。

柳家小太郎 唖の釣り

開口一番は、喬太郎さんの弟弟子にあたる小太郎さん。

小太郎さんが高座にあがると、あえてアウェー感であるがごとく、若干自虐的なマクラでしたが。このあとに出てくる喬太郎兄さんをしっかりフォローしながら、落語へ入っていく。

噺の内容は、殺生が禁じられている上野の不忍の池で釣りをするというもの。

不忍の池で釣りをしているのがバレると罪になるという事ですが、もし見つかりでもしたら、「母が病気で元気を付けるために鯉を釣って食べさせる」と口実をついて切り抜けようと、釣り好きの七兵衛が、与太郎を誘う。

入れ食い状態の与太郎は、はしゃぎすぎて役人に見つかってしまう。それどころか言い訳は間違えてしまう。でも、母の為と言う口実はなんとか通じたようで、無罪放免。

本当なら、捕まったあとは相図を送るはずが、与太郎さんはそのままご帰宅。

そんなことを知らずに、七兵衛さんは釣りを続けていたら、こちらもお役人に見つかってします。

いきなり見つかったことで驚いて顎が外れてしまい、ジャスチャーで状況を説明。これもなんとか切り抜けて無罪放免。でも、最後に外れた顎が元に戻って。

と、この噺は「おし」と言って差別的なニュアンスもあり、現代的にアレンジしている。特に喋れなくなった状態で相手に伝える手段としてジャスチャーを使っています。

古典落語には、盲目の方や耳が聞こえない方などが主人公になる噺がいくつかあります。そのため現代ではめったに演じないのですが、内容をアレンジしたりしながら継承しています。

柳家花緑 「明け烏」

喬太郎さんよりも若いのですが、花緑兄さんと言われています。

花緑さんの師匠は小さん師匠で、小さん師匠から見て喬太郎さんは孫弟子にあたります。

そんな中の二人ですが、本日の喬太郎さんの演目は小さん師匠が十八番にしていたと言われる噺を2つ選んだことに感慨深く感じていたようです。

なにか、とても嬉しそうに、演目について語っておりました。
また若かりしことの二人の出来事についても嬉しそうにしていたのを感じました。

いつ聞いても花緑さんの落語はわかりやすさとアレンジして作り上げている点だと思います。

初めて落語を聞く方にもわかりやすく聞いてもらうために、マクラで演目の説明をちょっと加えるんです。そして本題に入っていく。

今回の噺「明け烏」にしても吉原というところがどういうところか、どんな人物が登場するのかなど、ほんの少し解説してくれます。

今回の演目「明け烏」のあらすじは、大店の若旦那が堅物すぎて主人が町内の遊び人二人に頼んで、吉原へ連れて行き遊びを覚えさせるもの。

とは言え、そもそも遊郭などに興味がない若旦那を連れ出す口実として、お稲荷さんへ泊まり込みで参詣に行こうと誘いだす。

ところが、辿りつた場所が場所なだけに帰りかがるし、駄々をこねて泣き出す始末。

遊び人の二人は、吉原に入るときにあった大門では行きに三人で通ったのだから、一人で帰ると怪しい人物だと思われて捕まってしまうと脅し、なんとかなだめる。

それでもグズグズしていると、花魁にほだされて一晩過ごすやいなや、朝になり部屋へ迎えに行くと、帰りたいが花魁が手を離さないんだとノロケ始末。

遊び人の二人は昨晩全然持てなくて、すねているところに、若旦那にこんな風に言われて面白くない。

そこで二人は「じゃ、先に帰りますよ」と言うと、すると若旦那が「帰れるもんか、三人一緒に帰らないと大門で捕まりますよ」

柳家喬太郎 猫久

猫久は、小さん師匠の十八番。

マクラで、花緑師匠が真打になった時に披露口上の公演を一緒に回った時の事や落語協会に小さん師匠の同級生がいたことなど、落語よりも長く話していました。

さて、猫久という落語ですが、貧乏長屋に住んでいる久六という八百屋さん。大人しく怒ったところ見たことがないことから猫久さんとか猫さんと呼ばれていた。

同じ長屋に住む熊さんが、ある日血相を変えて長屋に戻って来た猫さんをみた。帰るなり女房に「今日と言う日は簡便ならねぇ、刀をだせーー」と女房に迫る。

女房は止めるどころか、刀を出し神棚に向かって上げて拝み、三度ばかり頭の上に戴くと亭主に渡し、急いで家を出た。

この一部始終を見ていた熊さんは、驚いたのと同時に誰かに言いたくて仕方ない。髪結いでこの事を云うと、そこに居た侍が訳を知りたがったので、事の一部始終を告げた。

侍は猫久という人物を化け物と勘違いしていたが、よくよく説明を聞くと、一大事に女房の取った行動に感動。自身の息子にもそのような嫁が欲しいと感心しきり。

熊さんは、その話を自分の女房にしようと帰ってみたが、家ではおかずの魚(イワシ)を本物の猫に取られてしまい、猫を退治しようと女房にすりこ木を渡すようにいうと、すりこ木を神棚に向かって三度ばかり頭の上に戴いて亭主に渡す。

当時、魚料理は臭いが付くからと女房は作りたがらなかったらしいです。

魚をすり身に知るのは、魚屋さんか亭主だったそうです。だから亭主はすりこ木を使い慣れていたので、刀の代わりにすりこ木を持って来いと言ったとか・・・

柳家喬太郎 うどん屋

この噺の一番の見せ場はうどんを食べる所ではないでしょうか。

マクラでは地方公演で秋田に行ったときに食べたおそばの話しから落語に入っていきました。

屋台を担いで売り歩くうどん屋さん。

おーーい、うどん屋さん、と声を掛けられ屋台を下ろしてみると酔っ払い。

寒いからちょっと火にあたらせろと言い、今日のめでたい話をし始めるので仕方なしに聞いている。

そのうち注文するかと思いきや、うどんは食べないと言って去ってしまう。

全く商売にならない。

「うどーん、鍋焼きうどーーん」と売り歩いていると、今度は女が呼び止めたので、行ってみると「赤ん坊が寝てるから静かにしとくれ」と言われる始末。

今日は商売にならねーなーーと思っていたら、とある大店の前で擦れた小さな声で「うどん屋さん、一つ下さいな」と奉公人。

なんでこんなに声が小さいのか?これはもしかすると、店の主人や番頭さんに見つかるまずいのか。これだけの大店だから2,30人は奉公人がいるはずだ。

見つかるとまずいから一人ずつ食べに来ているかもしれない。もしかすると今日一日分の商いがここで出来ると勝手にもくろんでしまう。

うどん屋さんも気を使ってなのか、小声で対応をする。

さてここで奉公人がうどんをすする場面。喬太郎さんがうどんをすするんですが、本当に本物のうどんを食べている様に見えるから不思議。

どんぶりから湯気が立っているようで、お汁の香りまで伝わってくるような気がしました。これが芸なんだと感心させられました。

そして食べ終えてお代を払ったときに「うどん屋さんも風邪をひいたのかい」

この日は、古典落語を4作も聴くことができ感動しました。

終演後、ロビーには公演ごとに描かれた色紙を見ることができました。その日その日の公演の感じが伝わりました。

そして驚いたのは、出演した花緑さんもロビーに居たんです。居たというよりも演者も観客も出口が一緒のようでした。

ほんの1,2mのところに花緑さんです。周りの方と気さくに会話をしながら会場を後にしていました。

生で観る落語は、まるで演劇をみているかのよう、素晴らしい話芸です。

落語と二人の俳優

落語を生で聞くなら寄席や各地域のホールでの公演が一般的です。

寄席なら落語以外に色物と呼ばれる漫才や音曲や神楽も楽しめます。
またホールで行われる落語は独演会や二人会などで落語を聞くことが出来ます。

そんな中、とても有名な俳優さんが落語をするという事で聞いてみることにしました。

それこそベテランの俳優さんですから、どんな感じになるのかとても楽しみでした。

俳優ラサール石井さんが噺家になる

一人目は「ラサール石井」さんです。
ラサール石井さんは大阪府出身。渡辺正行さん小宮孝泰とコント赤信号を結成。 フジテレビの「俺たちひょうきん族」に出演し人気を博していました。

現在は、俳優と舞台の演出・脚本やコメンテーターなどの多彩な才能を発揮しています。

これだけ精力的に活動されているラサール石井さんが新たに落語に挑戦。

早速ですが、ラサールさんの落語を聞いた感想ですが、 あれだけのベテランでも高座で緊張するという事。
同じ舞台とはいえ、演劇と落語ではこれほどまでに違うのかというくらい緊張されていました。

とは言え、前座修行をしたわけでもありませんが、 キャリアの浅い若手の落語家さんとは違いがありました。

まず、若手の落語家さんは、覚えた落語を一語一句間違わずに話す。
そんな姿をよくみます。 間合いなども一本調子で芸歴の浅さを感じる時もあります。

ラサール石井さんの落語が上手いかと言えば、お世辞にも上手いとは言えません。 しかし、話し方や客席との間合いは絶妙でした。

演劇なら舞台と客席に見えないラインがあって、舞台上で演じている演者を客席から見る感じですが、 落語などの演芸はラインがあやふやです。
見えないラインがあるようでないような。
そのラインを巧みに踏み越えたりしながら、観客を引き込む落語でした。

舞台なら動きながら台詞を言い、相手役もいるし身振り手振りで表現するので客席で見ている方は登場人物を想像しなくてもすみます。

でも、落語は座布団の上で一人が何役も演じ分けながら、客席はその登場人物や背景が想像できるように話します。ここが本職の落語家さんとの違いであり、とても大きな差だと感じました。

これからも機会があれば落語をするそうなので次回も楽しみです。

ラサール石井さんと柳家喬太郎さんの二人会

ラサール石井さんと二人会をしたのは柳家喬太郎さん。

チケットがなかなか取れない人気の噺家さんの一人です。

柳家喬太郎さんは古典落語だけじゃなく新作落語も精力的に手掛けています。
新作落語が舞台になって主演を務めたりもしています。

やはり落語と違い、動きながら台詞を言うのが難しいと仰ってました。

今回ラサール石井さんが古典落語の「鹿政談」、柳家喬太郎さんは新作落語の「ふくろうの夜」「拾い犬」。

柳家喬太郎さんの「拾い犬」は古典落語のような設定でとても秀逸な作品でした。
大まかなあらすじですが、貧乏長屋の子供二人が白い子犬を拾って飼おうとしたが、人間ですら食うに困った状況で犬は飼えないと母親に言われる。
そこで大家に相談すると、ここじゃ飼えないから裕福な家で飼ってもらおうと商家で飼ってもらうことに。

子供の一人がこの商家で働くこととなり、やがて大人になる。
まじめな仕事ぶりで主人からの信頼も厚く、娘との結婚も打診される。

もう一人の子供は悪さをして生きてきた。
そして成長した若者は、娘をさらい遊郭に売り飛ばして金を分けようと持ち掛けられる。

断るが刃物で脅されたが、あの時の白い犬が袖を噛んだりして止めに入り諦めて去っていった。 この一部始終を娘が見ており、この若者と結婚することになった。

それでも悪くなってしまった昔の友を案じる若者を、娘は「去る者(サル)は追わずよ」 で、若者は「道理で白犬とは犬猿の仲で」とサゲで終わる。

時代背景などから古典落語のようですがこちらは見事に新作落語です。
ものすごく秀逸な作品だと思います。

風間杜夫さんと柳家花緑さんの二人会

二人目は「風間杜夫」さんです。
50代以上なら知らない方はいないと思います。一躍有名になったのは、映画「蒲田行進曲」。
映画や舞台、テレビドラマで活躍されている70歳とは思えないほど精力的に活動されています。

当日は体調が悪かったせいか、喋るのが辛そうでしたが、ベテランの噺家さんのような間合いでした。
まくらから本題の落語に入るまでの流れは、本物の噺家さんのようでした。

トークショーで、風間さんが言っていた一言がとても印象的でした。
「噺家を演じている」という一言。
風間杜夫にとって、演劇で役を演じるように「噺家を演じる」と。

一番前の席で見たのですが、演じているようには見えません。
もうベテランの噺家さんのような立ち振る舞いです。
既に高座に掛けられるネタは12本程度あるとのこと。

今回、風間杜夫さんは「居残り佐平治」をやりたかったが時間の都合で「粗忽長屋」をやりました。

登場人物の八っあん熊さんのそそっかしい素振りを演じるのは簡単ようで、実は非常に難しい。なぜなら、自分が死んでいると言われて。それを確かめて納得するが引っかかるところもある。

ただただおっちょこちょい言うだけでは済まされない噺です。それほど登場人物が多いわけではない分、納得できるように工夫が必要ではないでしょうか。

その噺を見事に演じている風間杜夫さんに脱帽です。今度は「居残り佐平治」を見てみたいです。

この日の二人会の相手は柳家花緑さんです。最近では発達障害だとカミングアウトされてもなお活動の場を広げ、ますます精力的に活動されています。

今回は古典落語の「妾馬」でした。以前、山田洋二監督に「まるで寅とさくらのようだ」と評された噺。

冒頭で噺の背景などを分かりやすく説明してくれるので、初めての人でも親しみやすく優しさが感じられました。

とある殿様が長屋の前を通りかかったときに見初めたお鶴を側室に迎えました。世継ぎが居なかったが、お鶴が男の子を出産する。

お鶴の計らいで兄の八五郎が屋敷に呼ばれる。喜び勇んで屋敷に出向き、三太夫や殿様とやり取りをするが、そもそも下心があってお祝いのお金を貰えると目論んでいた。

三太夫やお殿様とやり取りをしているうちに、妹のお鶴のことを大事にしてほしい、末永くかわいがってほしいとお願いをする。

そんなしんみりした場面で、お鶴も同席していることに気が付き、景気づけに都都逸を披露し、お殿様にも都都逸を指南する。

そんな兄を気にいったお殿様は、兄を侍に取り立てます。「まさに鶴の一声」です。

今回は、兄が妹のお鶴を思う気持ちをお殿さまに伝える場面は、涙が出るほどの感動を与えてくれました。実際に周りの方もハンカチで目頭を押さえていました。

落語で涙したのは初めてですが、これは花緑さんの技量だと思います。

さすがに、風間杜夫さんもここまでは演じることは無理だと思える内容です。

やはり、落語は奥が深い話芸だと実感した二人会でした。

これからも様々なジャンルの方が落語に挑戦して落語の魅力を広めてほしい企画です。

特選落語会 古今亭菊之丞 文七元結

2018年12月15日、一ツ橋ホールにて落語特選会に出かけてきました。

出演は、三遊亭兼好さん、桃月庵白酒さん、そして古今亭菊之丞さん。

今回もっとも印象深かった落語家さんは、古今亭菊之丞でした。

今回の演目は落語と言うより、独り舞台を見ているようでした。

落語と言うよりも、物語の風景が見えてきて、舞台のようで、落語って笑わせるだけじゃなく、魅せるということもあるのかと感じました。

今回、古今亭菊之丞さんは「文七元結」という噺。

古典落語 文七元結 あらすじ

文七元結のあらすじを簡単に紹介しておきます。

腕のいい左官職人の長兵衛さん。

しかし、仕事もしないで博打に明け暮れ、借金は膨らんで家計は火の車。

五十両の借金を、娘が吉原に身売りしてまで肩代わり。

娘を預かっている吉原の佐野槌から使いの者が着て長兵衛さんが訪ねてみると、初めて娘が身売りしたことを知る。

女将は五十両を長兵衛に手渡し、来年の年末までに五十両を返済すれば、娘は返す。一日たりとも遅れたら、鬼になって娘に客を取らせる。

それまでは、自分ももとで身の回りの世話をさせておくと約束。

長兵衛は五十両を懐に家路に向かうが、その途中で通りかかった吾妻橋で身投げをしようとしている若い男の文七と出くわす。

見て見ぬ振りができない長兵衛さんは、文七を説得して身投げの理由を聞いてみると、集金したお金をすられた様で、このままお店に戻れない。

そこで長兵衛さんは、文七に自分が持っていた五十両のいきさつを話して、文七にあげてしまうんです。

すっからかんになった長兵衛さんは、家に戻ると奥さんと大喧嘩!

一方、文七はお店に戻り、五十両を主人に渡すも、主人から「この五十両はどうした」と聞かれる。

文七は、買掛を回収してきたと説明するも、実は文七、回収先で大好きな碁の相手をしているうちに夢中になってしまい、回収した代金を忘れて帰って来ていた途中で、懐に代金がないことに気が付きすられたと思い身投げを決心。

碁の相手先は、忘れていった五十両を届けてくれた。だから文七が五十両を持って帰ってきたので、どうしたのかと聞いてみた。

吾妻橋での一件を説明したが、五十両をくれた男性がどこの誰だかわからない。ただし、五十両をもっていたいきさつを覚えていたため、それをヒントに主人と文七で長兵衛さん探しを始める。

ちなみに番頭さんは佐野槌に向かって、娘を見受けし長兵衛さん宅へ向かう。

先に向かっていた主人と文七は、五十両の礼をいい、返そうとするもいったん出した金は受け取れないと意地を張る。

そこへ娘を連れた駕籠が到着し親子で対面し一件落着。

主人は、やがて文七と娘に所帯を持たせ、
二人して麹町貝坂に元結屋の店を開いたという、「文七元結」由来の一席。

落語はかたるだけではなく魅せるもの

古今亭菊之丞さんの落語は、寄席などで何度か見ているが、いつも思うのが魅せる落語家の一人であるという事。

落語は登場人物一人一人が語りの中から想像でき、舞台を観ている様に語る話芸だと思います。

今回の話も、古典落語であり、いままで多くの落語家さんが寄席やホール落語で演じてきている演目の一つです。

登場人物や場面の多さに、演じる落語家の技量が問われる作品です。

吉原の女将や大店の主人と番頭、そして長屋の貧乏な夫婦。登場人物以上に場面場面を切り替えて、あたかも舞台で演じている等に魅せる技術に落語のすばらしさを感じます。

まさに落語は魅せるもんだと実感した高座でした。

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ナイツ独演会2018「ワッショイ」でない事だけは確かに行ってきた

ついに念願かなって、ナイツ独演会「ワッショイ」ではない事だけは確かに行ってきました。

漫才あり、歌謡ショーあり、ゲストあり、中津川弦ありの楽しい舞台でした。

ナイツ独演会 10月15日国立演芸場にて

国立演芸場にて19時から始まりました。

18時30分開場と同時に入場しました。最後列には関根勤さん松本明子さん松村邦洋さん、そして放送作家の高田文夫さんなどもいらっしゃってました。

内容は、漫才は7本、企画コーナー1本、ゲスト3組、お楽しみありの2時間。

ほぼ笑いっぱなしの2時間です。

時事ネタ漫才 歌謡ショー

オープニングは、中津川弦さんによるご挨拶から始まりました。

なんとなく、素人っぽい感じを受けます。

キャッチコピーが「シャープでホットなハイ・ヤング。」

ハイヤングってなんだろう?キャラクターとして憎めない方です。

ご興味があれば、ぜひ浅草東洋館に足を運んでみて下さい。

ご挨拶のあとは、ナイツの漫才と続きます。

「2018年をヤホーで調べました」と今年話題になった時事ネタを1月から順に塙さんがボケながら説明し、安定感抜群の突っ込みを土屋さんが入れてました。

座席最後列に、関根勤さんがいましたが、かなり受けていたのか、会場で大きな笑い声が聞こえました。

今回は、企画として土屋さんが演歌歌手に扮装して、作詞:塙宜之の曲を歌い、観客席まで降りてきてお客さんと握手を交わしてました。

本当に駆け出しの演歌歌手のような感じがしましたが、芸能人っぽさを感じさせない、土屋さんらしさも感じました。

そして、最後にはあの刑事ドラマををパロディ化したコントもあり、笑いっぱなしでした。

独演会 ゲスト

公演ごとにゲストが変わります。

今回は、「きしたかの」・「ラバーガール」・「桂三度」の3組でした。

コントに落語と、漫才とカテゴリが違い、ちょうどよいアクセントになりました。

ラバーガールのコントは、背の高い大水さんのボケが最高でした。

上方落語の桂三度さんは、持ち時間が他の二組より多かったので、短くてもいいから古典落語を聞きたかった。

月亭方正もそうですが、ある程度のキャリアを積み上げてから、あえて落語家の道に進まれたのだから、今までの修行の成果を見たかった。

ナイツの漫才も楽しみですが、ゲストも多彩ですので、2時間丸ごと楽しめる構成になっています。

ナイツ独演会 まとめ

 

落語もいいけど、漫才も面白い。

ただし、テレビでわちゃわちゃと騒がしい漫才は好きではない。

ナイツの漫才は、話すスピードが日常の会話に近いこと、内容が時事ネタなので身近に感じる。

落語には古典落語があり、江戸時代の貧乏長屋のドタバタ、大店の息子の道楽、富くじで一攫千金など、現代と通じる部分があり身近に感じる。

ナイツの凄さは、身近に起きている、誰でも知っている事柄を、時事ネタを通して笑いに代える所だと思う。

今度は、浅草東洋館へ行ってみたくなった。

もちろん、中津川弦さんの漫談も聞いてみたい。

残りの公演もほぼチケットは完売のようです。

ぜひ、来年はナイツの独演会に行ってみてはいかがでしょうか?

 

落語とコント 創作の世界 「寄せて上げて」

三越劇場にて2018年8月30日18:00より、劇団「ペテカン」主催のジャンルを超えた多彩な舞台を見てきました。

主催したペテカンと柳家喬太郎師匠と東京03が舞台で落語とコントを繰り広げました。

ペテカンは、「More stage like to movie 映画のような演劇を。」を揚げて、リアルな演出と気楽に楽しんでもらえる舞台を目指して活動している演劇集団。

柳家喬太郎は、1989年に柳家さん喬師匠に入門し古典落語から新作落語まで幅広く演じる落語家です。
2016年に映画「スプリング、ハズ、カム」で初主演。映画でも非凡な才能を発揮。

東京03は、豊本明長と飯塚悟志のコンビ「アルファルファ」に角田晃広が加入して、2003年に結成。
日常の出来事を描くコントでコアなファンが多数。

普段は一緒に同じ舞台で共演することがない3組がコラボした舞台を観て感じたことがあります。

演劇・コント・落語も創作が生み出したもので、笑いも涙も感動もいろいろなものが織り交ぜられた作品だと思います。

落語には古典落語と新作落語がり、演劇には喜劇やミュージカルなど多くのジャンルがあり、古くから上演され続けている作品も多い。

コントには笑いだけじゃなく風刺という面もあり、日常の些細なこともコントのネタになるほど生活に近い部分がある。

3つとも別々のジャンルではあるが、何かをヒントに創作された作品を、それぞれのフィールドで演じている。

そんな別々のジャンルで活躍する3組が、同じ舞台で共演したが、違和感なくそれぞれを楽しむことができた。

開口一番 前座 皿屋敷 怪談噺?

開口一番(この日一番最初に噺をするもの)として前座さんが高座に上がると紹介されて緞帳が上がる。

出囃子とともに出てきたのは柳家喬太郎さん。

会場は爆笑に包まれながら、落語が始まる。

はじめは、古典落語の「皿屋敷」。

本日のメンバーをみると、なんとなく新作落語をするかと思ってしまうが、夏の時季に怪談チックな噺を持ってきました。

古典落語ではあるが、ちょっと大人が楽しめるシーンが随所にあり、かなり盛り上がりました。

ペテカン コント

・女性2人が舞台で、披露宴でよくある新婦側の友人としてスピーチのコント
・40過ぎていまだに夢を追ってバンド活動しているコント
・結婚前提で付き合う二人にサプライズフラッシュモブからの披露宴
最後のコントは、一番最初の披露宴のスピーチに続いている。

コントとは言え、繋がるのある話に仕立てている。

東京03 日常の出来事

東京03は2本のコントを披露。

・自慢話の話
・落ち込む同僚

どちらも日常でありそうなサラリーマンの世界を描いていて、ちょっと大袈裟な感じもするが、こういうことが自分に降りかかれば、同じことを言っているかもしれないと思わせる作品。

リアルな部分が多く共感できる作品が多くコアなファンが多いというのも頷けます。

3人のコントと言うか演劇的なところも、観ていて納得できるところです。

日常を描くというのは、非日常を描くよりも難しいと思う。日常を描くには、共感できる部分をいかに描くかがポイントだと思う。
大袈裟すぎてもリアルすぎても、どちらも引いてしまう。

このバランスがとてもいいのが東京03ですね。

日常の出来事を元に創作しているから共感できる部分が多く、嫌みなく笑える作品が多い。

新作落語にも同じように言えるのではないでしょうか。

柳家喬太郎 新作落語「ハンバーグができるまで」

最後は、柳家喬太郎の新作落語「ハンバーグができるまで」。

開口一番では古典落語でしたが、最後は新作落語で締めくくりました。

この話は、現代の離婚した夫婦の話。

落語と言うよりも一人舞台のような感じでした。

劇団「ペテカン」も東京03も一人ではなく、話の内容に合わせて舞台装置も小道具も変えることが出来る。

しかし、落語は古典だろうが新作だろうが、着物を着て高座に上がり、人情噺・怪談噺・滑稽噺・芝居噺などあるが、すべて一人で演じ切る。

登場人物が何人いても一人で演じる。

小道具と言えば、手ぬぐいと扇子だけである。たったそれだけで、一人で高座に上がって演じているが、観ていると、そこには何人もの人物が見えてくる話芸。

まとめ

今回、古典落語と新作落語の2本を見て感じたのは、古典落語はいろいろな方が高座で演じながら、さらに話に工夫を凝らしながら引き継がれてきました。

しかし、新作落語は創作した本人だけが高座で演じている。自分で話の内容に磨きをかけていくしかない。

常に、修行しているようなものだと思う。誰からも稽古を付けてくれるわけではない。

今回の舞台で、新作落語は常に挑戦だと思う。その挑戦を続けて行くことが、落語の発展に繋がっていくと感じました。

新作落語は創作の世界でもあり、今回の劇団ペテカンや東京03も同じ創作をする集団です。

それぞれの形式は違えど、モノを作り出す世界観は同じではないだろうか。

寄席やホール落語だけでは感じることができない体験ができたことで、より落語が好きになった。

最後に驚いたのは、今回新作落語の「ハンバーグができるまで」が舞台化されます。

2019年3月20から3月24日まで銀座博品館で上演されます。

新作落語が演劇になるなんて!

鈴本演芸場2018年7月中席昼の部

2018年7月27日、上野と御徒町の中間に位置する鈴本演芸場昼の部へ行ってまいりました。

平日の昼間にも関わらず立ち見が出るほどの盛況ぶり。

落語ブームなんでしょうかね、凄いなーーって感じです。

本日の出演者

落語 柳家小太郎

奇術 アサダ二世

落語 柳家 さん助

落語 桂 文楽

漫才 すず風 にゃん子・金魚

落語 金原亭 馬遊

落語 春風亭 一朝

粋曲 柳家 小菊

落語 柳家 権太楼

曲独楽 三増 紋之助

落語 柳家 さん若

落語 桃月庵 白酒

紙切り 林家 楽一

落語 柳家 喬太郎

演目

柳家小太郎さんの演目は「初天神」。

父親に駄々をこねて、おねだりするも、子どものほうが口だけは一人前な親子のお話。

父親と子供のやり取りが何とも言えず、駄々をこねる姿が目に浮かびますが、実は子供のほうが親よりも何倍もしたたか。

今も昔も、親は子供にうまく騙されちゃうんですね。

落語の世界の噺なので可愛さがありますが(笑)

アサダ二世さんは手品でした。

会場のお客さんを巻き込んで、笑いありの手品ですが、錯覚を使って見事に騙されました。

桂文楽師匠の演目は「六尺棒」。

大店の主人と遊んでばかりいる息子とのやり取り。

ここでも、父親と息子との掛け合いがありますが、最後は父親の粋な手口が落ちとなる噺。

それにしても落語に出てくる息子はろくなのがいませんが、どこか憎めないのが特徴です。

金原亭馬遊師匠の演目は「手紙無筆」。

字が読めないのに手紙をもらって困ったが、物知りに頼んで代わりに手紙を読んでもらおうと手紙を渡す。

ところが、この自称物知りも字が読めないということで、ちぐはぐなやり取りをする噺。

春風亭一朝師匠の演目は「祇園祭」。

江戸から上方見物にやってきた熊さんが祇園祭で、京都の自慢ばかりするのに腹を立てと、江戸と京都の自慢合戦。

高座は持ち時間が15分程度と短いため、一部だけでしたが、夏祭り時期にピッタリな噺でした。

それにしても、江戸弁と京都弁の喧嘩腰のやり取りは、本当にそこに二人の人物がいるように見えてくるから不思議です。

柳家権太楼師匠の演目は「代書屋」。

今の時代に代書屋さんはもう見かけなくなりましたが、昭和初期の頃から昭和の終わりごろまで実在した職業です。

職に就くために必要な履歴書を、自分の代わりに書いてもらう。無筆で同じで読めないし書けない。

そんな時代背景があったころに作られた落語です。

柳家さん若(9月下席から真打昇進 柳家小平太襲名)の演目は「粗忽長屋(そこつながや)」

長屋に住む仲のいい八五郎と熊五郎。兄弟同様の仲。二人ともそそっかしい性格。

行き倒れがあったところに八五郎が通りかかり、死体をみて「これは熊五郎だと」言う。

間違いないかと尋ねると、本人を呼んでくるから待ってろと、長屋へ戻って熊五郎を連れてくる。

死体を前に、八五郎は「この死体は熊五郎、お前だな」と確認させる。

当の本人もその気になって・・・。死体を抱いて長屋へ運ぶことになって、ようやく熊五郎は「抱かれてるのは確かに俺だが、
抱いてる俺はいってえ、誰なんだろう」

柳家喬太郎師匠の演目は「そば清」。

最後に出演する落語家さんを主任(とり)と呼び、高座の時間も30分程度あります。

この日は枕(落語の本題に入る前の導入部分)を20分ほど話してから、本題に入りました。

枕だけでも十分に笑えました。演芸場はこの日一番の爆笑でした。

本題に入ると、そばを食べるシーンがあるのですが、本当にいまそこで食べているかのようで、帰りにそば屋に行きたくなるほど。

やはり、演芸場でみる落語は、その場の雰囲気や客層に合わせて演じているので、その日その時しか見られないんです。

ぜひ、寄席に行ってみて下さい。

新宿末廣亭 落語を見るなら寄席が一番

新宿末広亭 7月中席夜の部に行ってきました。

都心のど真ん中、新宿三丁目に昭和初期の佇まいを醸し出す建物が新宿末廣亭。

周りは飲食店が立ち並び、夜はサラリーマンやOLさんで溢れかえる街。

そんな立地に新宿末廣亭はあります。

今宵も仕事帰りに、寄席に立ち寄ってみました。

末廣亭 夜の部 17時から21時まで

仕事帰りという事もあって、末廣亭に到着したのは19時をほんのちょっと回ったところ。

ちなみに、夜の部は19:45分を過ぎると入場できませんのでご注意ください。

入場料は3,500円ですが、開演から2時間を少し回っていたため1,500円でした。

中入り(休憩)前でした。中入り前に高座に上がって落語が出来るのは、主任(トリ)の次に大きなネタを演じられる落語家さんです。

途中で入場したら、係員さんから座席の最後尾で待つように言われます。

これは、いま演じている落語を聞いているお客さんと落語家さんへの配慮ですね。

中入りに入ると、途中入場した方や既に座られる方がトイレや売店に向かうため、一斉に移動が始まります。

今回は、桟敷席が空いていたため、靴を脱ぎ座敷に腰掛けました。

脱いだ靴は、席の処に靴を入れるところがあるので、そこに収納しておけます。

ちなみに2階席もありますが、2階席に上がるときは、靴をビニール袋に入れるようです。

末廣亭 東京にある4つの定席(寄席)の一つ

末廣亭は東京の定席としては、唯一木造の建物なんです。

周りはビルに取り囲まれていて、末廣亭だけ時代が止まってしまっているような錯覚に陥ります。

でも、古いという感じではなく、どこか懐かしい雰囲気のある建築物ですね。

客席は1階と2階合わせて計313席。

1階中央に椅子席、その両側に桟敷席があります。

都内の定席で畳敷きの桟敷席があるのは末廣亭だけ。

入場した途端に、別世界に来たようです。

なんと表現したらいいのか、ぜひお立ち寄りください。

末廣亭の売店

売店は、入口すぐの右手にあります。

飲み物や軽食・お菓子やお土産品などが販売されています。

アルコールの販売はありませんし持ち込みもNG。酒気帯びでの入場もNGです。

食べ物は持ち込んでもいいんですが、匂いがするものなどは周りのお客様の迷惑にもなるので控えましょう。

おにぎりやいなりずし、お団子など軽いものがお勧めです。

末廣亭のすぐそばにコンビニがありますので、そちらで簡単なものなら購入できますよ。

売店の営業は、開演前と中入りのときです。

雰囲気として、昔の駄菓子屋さんのような風情です。

末廣亭 テレビでは見ることが出来ない芸の宝庫

さて、今回の公演レポートですが、寄席に来て毎回思うことは、テレビなどでは見ることが出来な芸の世界を垣間見れます。

寄席は落語だけじゃなく、色物と言われる漫才・物まね・漫談・奇術・神楽など様々な芸を1年365日毎日上演しています。

テレビでは見られないものばかりだし、寄席に行かなきゃ見ることが出来ません。

とても貴重な体験ができる場所です。

今回は、漫才に漫談あり、そしていま人気の落語家「春風亭一之輔師匠」が主任(トリ)を務めました。

入場するとプログラムをもらいます。これは本日出演する方が載っているほか、今後のお知らせなどが記載されています。

スケジュールに記載されていない方が出演?

寄席は毎日行われているため、やむを得ず出演できないこともあります。

そのようなときは、必ず代理で出席して欠席した落語家さんの穴を埋めてくれます。

今回は、2人の欠席がありましたが、ちゃんと穴埋めもあえい、なおかつ大いに楽しませてくれました。

こういった事態にも対応できる仕組みがあることが凄いですね。

お金を払ったお客側からしたら、当たり前だと思うかも知れませんが、不測の事態を常に意識して即対応できるようになっていることが素晴らしいです。

寄席だから体感できる芸の道

今回は途中から入場したこともあり、1組の漫才、1組の漫談、4人の落語家さんの芸を楽しむことが出来ました。

まず、漫才は「笑組(えぐみ)」さんんです。

芸歴は長く1986年に結成された内海好江さんを師匠に、漫才だけじゃなく三味線や長唄なども叩き込まれたそうです。

ボケ担当のゆたかさんは、伊集院光さんとお互いの師匠の付き人時代から顔見知りと足立区出身という間柄から、以前は伊集院さんのラジオ番組のアシスタントをされていたそうです。

舞台では、ゆたかさん(座席から見て右側の方)が80%以上しゃべくりまくります。

相方さんは、たまにつっこみますが、ほぼゆたかさんの漫談のようです。

しかし、それが二人の持ち味で相方をいじり乍らの漫才です。

えげつなく頭を叩いたりするような突っ込みもなく、聞いていてクスクスできる笑いです。

またしゃべりもゆっくりで聞き取りやすく、客席を見ながら、こちらの状態を感じながら漫才を見せてくれます。

次にギター漫談の「ペペ桜井」です。

初めて見る方です。年齢も80歳以上のようで、ギター片手に喋ります。

幾分ギターの音が外れている様に聞かせて笑いを取っていますが、しゃべりもなかなかです。

落語協会のHPに経歴が載っていますが、写真が若すぎます(笑)

春風亭一左 「浮世床」

落語は、まず春風亭一左さん。

春風亭一朝師匠に入門した二つ目の落語家さんです。

今回の噺は「浮世床」という滑稽噺でした。

昔の床屋さんは、若者が集まって情報交換するような場所でもあったそうです。

髪を結うこともしないのに床屋にきて、みんなとワイワイガヤガヤとしゃべったり、囲碁や将棋を売ったり、本を読んだりしていたそうです。

この話は、床屋に集まて来た男性たちが字が読めないのに本を読めるふりをしたり、適当な将棋を指したり、女にモテて仕方ないと自慢したり、騒がしい風景を描いた作品です。

本が読めなくて揶揄われるやり取りのところは、江戸っ子気質の見栄っ張りな男の感情がなんとも言えません。

現代も男は、見えや世間体で生きているところが、昔と変わらないのは滑稽な感じです。

柳家小八さん 「千早ふる」

続いては、柳家小八さん。2017年に真打になったばかり。

今回は、柳亭こみちさんが急遽出演できなくなっての代演です。

大学では物理学を専攻していたそうで、落語の世界に入ってから師匠に専攻した学問を生かすようにと言われたエピソードをまくらに、今回は「ちはやふる」を演じました。

こちらも無学な男性が百人一首の「千早ふる神代も聞かずたつた川からくれないに水くぐるとは」とう歌の意味を調べるため、隠居のところにやって来る。

ところが、この隠居も意味を知らない。しかし、いい加減ことを言ってごまかそうとする。

この古典落語をアレンジして、大学で専攻した物理学をフルに活用して現代風に置き換えていました。

ただ、古典落語を忠実に演じるだけじゃなく、自分のオリジナル的な落語にしてしまうのも面白いところです。

とても感心させられて、マクラが十分に生かされた高座でした。

春風亭一之輔 中席主任 居残り佐平治

高座に上がると、本日一番大きな拍手をもらったのではないでしょうか。

相変わらずの人気ぶりだと実感しました。

落語は居残り佐平治。遊郭と言うと吉原が有名ですが、品川にも遊郭があり、そこを舞台に話は進みます。

15分で噺をまとめることが出来ない話なので、主任は30分ほど時間を持っているからこそ高座にかけられる話なんです。

いろいろな方が、高座にかけた「居残り佐平治」を聞きましたが、一之輔さんの佐平治は遊び人の上に人を騙す人物にピッタリな印象でした。

ただ、佐平治が遊郭で居残りしているときのエピソードをもっと演じて欲しかったと思う。

遊郭で居残りとなってから、世渡り上手で若い人の仕事を横から奪って、チップをもらいながら、いつしか太鼓持ちとして氏名まで受けてしまうくだりがあるからこそ、最後にお店の大旦那に嘘を並べて金銭から着物まで巻き上げて、遊び惚けた代金を踏み倒して、堂々と店を後にするところが生きてくる噺だと思います。

今度は独演会などがあれば、ぜひじっくりと演じて欲しい噺です。

末廣亭 まとめ

いかがでしたでしょうか?

末廣亭には年に数回行きますが、毎回楽しませてくれる場所です。

椅子席からでも桟敷席からでものんびりと落語や漫才が聞けます。

もし、新宿へお越しの際は末廣亭にお立ち寄りください。

春風亭小朝・清水ミチコの大演芸会 横須賀芸術劇場 2018年6月

春風亭小朝・清水ミチコの大演芸会 横須賀芸術劇場 2018年6月

都内では気温が30℃に達し、真夏のような土曜日に京急線汐入駅前にある横須賀芸術劇場に行ってきました。

今回の公演は春風亭小朝さんと清水ミチコさんという、ちょっと異色の組み合わせにもみえる二人の演芸会を楽しく鑑賞してきました。

落語とピアノの演芸会

横須賀芸術劇場に入場して驚いたのは、今までホール落語で訪れた、どの会場とも違う雰囲気に圧倒されつつ、最初に登場したのは、春風亭勢朝(しゅんぷうていせいちょう)さん。

開口一番、「小朝と清水ミチコは、すぐ出しません。」の一言で会場を沸かせました。

勢朝さんを見たのは今回がはじめて。

どんな落語を聞かせてくれるのかと少し構えていましたが、軽快な語り口で、会場を埋める客層に合わせながらダジャレやら、ちょっとした楽屋ネタ的な噺で会場を盛り上げました。

勢朝さんは、1979年に5代目春風亭柳朝師匠に入門。

1991年師匠の死去に伴い春風亭小朝一門に移籍された経緯があります。

演目は「大師の杵」。

弘法大師様のお話なんですが、弘法大師が修行中の身である20代の頃の噺。

実は、弘法大師=空海の20代の頃の記録はほとんど残っていないのですが、落語の噺では修行中に出来事として語り継がれている。

いかにも落語らしいサゲで終わるところがいい感じの噺です。

15分程の高座でしたが、なんとなく内容的に、演芸場で聴く落語のようでした。

会場のお客様の反応を見ながら、所々に最近のニュースをネタにしながら飽きさせることなく、小朝師匠に引き継いでいくあたりは、さずがプロですね。

やはり落語家さんの話術は勉強になります。

春風亭小朝師匠 代書屋

春風亭勢朝さんの後に、小朝師匠と清水ミチコさんが登場して、本日のプログラム内容や二人会の経緯など話されるのかと思っていたら、普通に小朝師匠の落語が始まりました。

上方の落語家さんが使われる見台があり、江戸落語でこの見台を使われるのは初めて見ました。

さて、まくらは芸能ニュースから始まり本題の「代書屋」へと移っていきました。

小朝師匠の落語を生で観るのは初めてだったのですが、もう少し毒のある尖った感じの噺になるのかと思っていました。

しかし、聞きやすくとても穏やかな感じの落語でした。

まさか「代書屋」を聞けるとは思わなかった。

上方の桂米團治さんが昭和13年ごろに新作落語として作られたとか。

上方では桂枝雀さんや桂春団治さんなども演じています。

もともとが上方落語だったのと、最近は代書屋さんと言う職業自体見かけることが少なくなったせいもあるのか、あまり聴くこともなくなってきたように思えます。

久しぶりに「代書屋」を聞けてラッキーでした。

小朝師匠 立て続けにもう1本 宗論

1本目の落語が終わったので、一旦高座から下がるのかと思ったら、そのまま次の演目へと進みました。

今までに経験したことのない展開でした。

立て続けに2本の落語を休みなく演じるのかと驚きました。

この宗論ですが、大店の若旦那がキリスト教の集会へ出かけてしまい、仕事を疎かにする様に堪忍袋を切らした旦那さんと、その息子のとの宗論の噺です。

噺の途中で賛美歌を歌いだしたりと、堅苦しくないけれども古典落語という、はじめて落語を聞く方には聞きやすい落語だと思いました。

小朝師匠と清水ミチコさんのトーク

小朝師匠の落語の後は、清水ミチコさんが登場です。

最初は、小朝師匠と清水ミチコさんの、若干噛み合っていないトークに苦笑いしましたが、そこはベテランのお二人。

噛み合わなくても、前に進めちゃうんですね。

舞台慣れというか、テレビの収録ではない、まさに目の前にお客さんがいる状態でも、うまくまとめるところはプロですね。

二人のトークが終わった後は、清水ミチコさんの物まねがスタートです。

清水ミチコの物まねオンパレード

テレビやラジオなど活躍の場が沢山あるなかで、最近ピアノを改めて習いだしたそうです。

クラシックを習っているそうです。常に努力するからこそ、素晴らしい舞台を作ることが出来るんだと感じました。

物まねは定番の「桃井かおりさん」「矢野顕子さん」「全然似てない松たか子さん」。

政治家の物まねが会場を沸かせました。「麻生太郎大臣」は独特の言い回しで会場は大爆笑。

女性がクセの強そうな「麻生太郎大臣」の物まねをするのは難しいと思いますが、特長を捉えながら誇張せずに演じるのはとても良かったです。

そしてピアノ演奏をしながらの歌まね。

「中島みゆきさん」「ユーミン」など定番ネタながら、とても楽しめる物まねでした。

ちなみに、新しい物まねはラジオ番組などで試してみて反応が良いもは、テレビなどで披露するそうです。

いろいろと創意工夫し、常にチャレンジしている姿が素晴らしですね。

まとめ

ちょっと、変わった演芸会でしたが、落語とコラボする楽しい演芸会でした。

落語と言うと古く難しいものと思われる方もいますが、そんなことはありません。

新作落語というのもあり、現代を舞台にした作品もたくさんあります。

ぜひ、落語を聞いてみて下さい。

桂文珍 大東京独演会2018 国立演芸場

2018年4月30日、国立演芸場にて、桂文珍さんの独演会「大東京独演会」へ行ってきました。

いままでも独演会などホール落語には、何度も足を運びましたが、今回の公演はいつもより年齢層が高めのように感じました。

桂文珍師匠は、以前テレビやラジオのレギュラーを何本も持っていたので、特に年配の方で知らない方はいないのではないかと思います。

ここ数年は、後進のために落語を中心に活動されているそうですが、認知度のある落語家さんですから大入り満員でした。

今回、入場時にA4版にの用紙に演目がずらーーーっと書き込まれた用紙を手渡されました。

なんと、リクエストができるようになっており、記載されている演目から3つ選んで投票するシステム。

2018年4月30日のプログラム

  • 投票結果発表
  • 会場から好きな演目をリクエスト
  • 本日のゲスト発表

大雑把にこんな感じで始まりました。

文珍さんが登場しても「ワー、キャー」と言う甲高い声援はありません。

拍手だけでしたが、とても和やか雰囲気で始まりました。

投票結果発表 ベスト3は?

老婆の休日、憧れの養老院、地獄八景亡者戯(もしかすると違うかも)の3つが選ばれました。

新作落語が2つもありました。客席の年齢層が高めだったので古典落語がベスト3を占めると思ったので意外な結果に驚きました。

今回、ベスト3の発表には、文珍さんのお弟子さん「楽珍」さんがお手伝い。

ピンクの着物で小道具を持って登場されました。なんでも弟子入りして37年も経つそうで、あの笑点の司会者「春風亭昇太」さんよりも先輩だとかいうのですが、見た目はもっと上のような・・・。

会場から好きな演目をリクエスト

ベスト3を発表した後は、リクエスト用紙に書かれていた演目から追加リクエストを募りました。

皆さんかなり積極的に挙手しておりました。積極的な方が多いんですね。

リクエストのなかから、なんとお弟子さんの「楽珍」が演じることとなりました。

楽珍さんが演じるのは「手水廻し」。

楽珍さんのエピソード

出身は鹿児島県の徳之島。選挙の投票率が108%と言うほど選挙ではいろいろとあるらしい。

そんな楽珍さんが、文珍師匠のところへ入門にいくと、方言が凄すぎて文珍師匠から「いつ日本に来られたんですか?」と。

かなりの天然ボケもあり、文珍師匠のトークのネタにもなっています。

本日のゲスト発表 今回は浅草で有名な漫才師

独演会は3日間行われました。

初日28日は「宮川大輔・花子さん」、2日目の29日は「中川家さん」、3日目30日は「ナイツさん」

昨年は「桂米丸師匠」をお迎えしたそうですが、今回の公演ゲストは全て漫才にされたそうです。

ゲストの漫才もすべて見たかったほどの顔ぶれです。

やはり大物落語家さんともなるとゲストも、舞台でしっかりと勤められる方ばかりで驚きました。

前説と言うのでしょうか、ここまでが本日の内容説明でした。

ここまで聞いただけで、本日の面白さが伝わってきました。

桂楽珍さん 落語「手水廻し」

ご自身の出身地と入門から現在まで関西で過ごしていることから言葉に関することからスタート。

古典落語の「芝浜」の一部を、「江戸落語」と「上方落語」それぞれの言い回しで演じてみました。

江戸弁で聞きなれていた芝浜を上方言葉で聞くと、また違った噺に聞こえて、それはそれで面白いのではないかと思います。

最後に、楽珍さんの出身地:鹿児島の徳之島の方言で芝浜を演じました。

まったく何を喋っているのかわからない。まるで外国語のようでもあり、なんとなく沖縄の言葉のようにも聞こえました。

話し方や表情豊かに話すので、こんなにも言葉(江戸弁、関西弁、徳之島の方言)で一つで違う内容の噺に聞こえます。

このまくらで観客の心をグッと掴んで、「手水廻し」につなげていきました。

20分ほどの高座でしたが、あっという間に終わってしまい、もっと聞いてみたい気持ちになりました。

自宅に戻って、楽珍さんをネットで検索すると、芸だけじゃなく私生活もびっくりな方のようです。

波乱万丈な人生を送られている感じです。

文珍師匠のトークのネタが尽きないほど、エピソードをお持ちの方です。

ちなみに「松本人志さんのすべらない話」で漫才師:矢野兵藤さんの兵藤さんが、楽珍さんのエピソードを披露しています。

楽珍のえエピソードはこちら(youtubeより)

独演会 桂文珍 2018年国立演芸場

この日の演目は、「老婆の休日」「らくだが来た」「胴乱の幸助」の3本。

上方落語の印象は、先日お亡くなりになられた「月亭可朝さん」をはじめ「月亭八方さん」「桂きん枝さん」「桂文枝さん」など、以前は演芸番組やヤングオーオーというテレビバラエティ番組でお見かけした方しか知らなかったんです。

さらに上方落語はほとんど聴いたことが無かったので、どんな感じなのか興味津々な状態で高座を凝視しておりました。

最初に新作落語の「老婆の休日」となりましたが、文珍師匠は神戸出身と言うことで、やわらかい言葉で語るので、とても耳障りもよく、また噺の内容が身近にあることなので、会場は大爆笑となりました。落語でここまで笑いが起きるのかと驚きもありました。

久しぶりにおなかを抱えるほど笑うことが出来ました。

古典落語の「らくだ」のスピンオフ「らくだが来た(新作落語)」と

古希を迎えられているにも関わらず、高座では年齢を感じさせないテンポのよい語りに、これからさらにいい落語が聞けそうです。

すでに来年(2019年)も4月末の3日間、国立演芸場での公演が決定しています。

江戸落語とはまた違う趣きがあります。ぜひ一度ご覧ください。

上方落語 小道具 見台

上方落語には、江戸落語と違い手拭・扇子のほかに小道具があります。

その小道具の一つが見台と呼ばれるものです。机みたいなものです。

その机の前に衝立のようなものを置きます。

この衝立みたいなものを「膝隠し」と言います。

落語家さんの着物が乱れても見えないように置いてあると聞きました。

着物が乱れるほど、身振り手振りが激しいのでしょうか。

上方の落語家さんのほうが、リアクションが大きいんだと思います。

さらに、小拍子という拍子木の小さいものがあり、ここぞという見せ場で、見台を叩いて場面を盛り上げたりします。

文珍さんは、見台の上や横を「タンタンタン」と叩いて、噺の演出に使われていました。

ちなみに、お弟子さんの楽珍さんは、見台を使わずに落語を演じてました。

まとめ

上方落語をほとんど聞いたことがなかったので、どんなものかと思い今回は出かけて見ました。

江戸落語と違い、身振りや手振りも大きく、趣もことなりますが落語という一人で何役もこなして行う話芸は江戸も上方も同じだと思います。

「江戸落語は聞かせる」感じですが、「上方落語は観せる」と言う感じですかね。

ぜひ、機会があれば上方落語も楽しんでみてはいかがでしょうか。

サラリーマンの皆さん!落語を鑑賞しよう

「落語にも付加価値が必要だ!」と、あの立川談志さんが言われたそうです。

付加価値を生み出すのが工夫であり、その工夫が新たなものを生み出す。

いっけん無駄だと思えることでも徹底して行動してみることから、何かが生まれるのではないでしょうか。

そこで、落語に付加価値ってなんだろうと考えてみました。

古典落語こそ付加価値の集大成?

古典落語は明治時代以前に作られた落語ですが、今日まで古典落語が継承されてきたのは、この工夫があってこそではないかと思います。

噺の大筋内容は同じであっても、時代に合わせてちょっとだけ登場人物を変えてみたり増やしてみたり工夫を凝らして発展させてきたからこそ古典落語として今日まで続いているのだと思います。

工夫に工夫を重ねた作品が新作落語だと思います。

2017年4月に渋谷で行われた春風亭昇太さん、林家彦いちさん、三遊亭白鳥さんの3人による新作落語を鑑賞して来ました。

新作落語

初めて新作落語を体験しましたが、とにかく笑える作品でした。

紹介した3人は古典落語だけじゃなく新作落語にも力を入れて活動しています。

春風亭昇太さんと三遊亭白鳥さんは、新作落語のユニットを組んで活動していたほど、新作落語に精力的に取り組んでいます。

当時のユニット名は「SWA(すわっ)」と名前で活動をし2011年には解散してしまいました。

 

林家彦一さんはSF的なタイムマシーンで過去の自分に合うという設定の噺でした。

落語でSFチックな噺は想像できないかもしれませんが、斬新というより落語に対する固定概念を打ち破ってくれました。

ちょっと新作落語に抵抗があったんですが、新作落語は演じ手の工夫がふんだんに盛り込まれています。

新作落語の創意工夫 サラリーマンの仕事と同じ

新作落語は何度も作り直したり、演じるその日にちょっと話を作り替えたり、客席の反応を観ながら内容を作り替えていくと思います。

これってサラリーマンの世界も同じで、特に営業さんならわかるのではないでしょうか。

営業トークを確立するまで何度も何度も試行錯誤したり、プレゼンのために資料を何度も書き換えたりしながら作り替えることと一緒です。

また、お客様と話をするときは、いきなり商品説明なんてしないですよね。

まずは、お客の興味がありそうなことや世間話的なことを話しながら、自社の商品説明へと移っていきます。

落語も、高座に上がったとたん落語をはじめません。

まずは、お客を観ながら時事ネタや話題のネタで様子を見ながら前ふりをして本題にはいります。

最後は落ち(さげ)につなげていきます。

営業に例えるなら、最後の落ちはクローズとなり注文をいただけるところ。

いかにリサーチして顧客(観客)の心を掴み、商品(本題)の必要性を説いてクローズ(落ち)へと持っていく。

サラリーマンのあたたこそ、落語家さん公演に出かけて落語を聞くことは、上司の話を聞くより100倍以上価値があります。

落語の公演へ行けない方へ

落語の公演へ行けない方は、まずはYOUTUBEなどで落語を聞いてみて下さい。

短い話でもいいので、いくつも見て下さい。

そのうち気になる落語家さんが見つかります。

なんども聞くうちに、落語の素晴らしさが理解できると思います。

まずは、落語を聞いてみましょう。

そして、仕事に役立てて下さい。