落語 二番煎じ 寒い冬に聞きたくなる噺|

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「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があります。江戸時代、一度火事が起きると木造家屋が密集した町はひとたまりもなく燃え広がります。特に冬は乾燥して火事が起きやすい季節です。

そこで、自分たちの町内は自分たちで守ろうと、商家や名士たちが集まって夜間に町内を見回る「自身番(じしんばん)」という組織ができました。

「二番煎じ」は、その夜回りを舞台にした噺です。寒い冬の夜、真面目に仕事をしているはずの旦那衆が……というお話。前半の滑稽さと後半の粋なオチが絶妙に組み合わさった、冬の季節に聴きたくなる一席です。

この記事でわかること

  1. 二番煎じのあらすじ
  2. 前半の見どころ:寒さと滑稽な夜回り
  3. 後半の見どころ:大人の楽しみとお役人のオチ
  4. 実際に聴いた感想(恵比寿ルルティモ寄席2021)

二番煎じのあらすじ

夜回りはじまる

冬の夜、町内の旦那衆が集まって夜回りをすることになりました。とはいえ真冬の夜の冷え込みは半端ではありません。ヒートテックもホッカイロもない時代、着物の上に袢纏(はんてん)を羽織っただけで外に出なければならないのです。

あまりの寒さに、月番の旦那が提案します。「夜回りを二班に分けて交代で回ろう。」一同は全員賛成。最初の班が夜回りに出発し、残った班は番小屋で暖を取りながら待つことになりました。

最初の班のメンバーはこちらです。

月番の旦那 チームリーダー
宗助さん 提灯(ちょうちん)係
歌のお師匠さん 拍子木(ひょうしぎ)係
鳴子係の旦那 鳴子(なるこ)係
辰っつあん 金棒(かなぼう)係

いい加減な「火の用心」

それでは出発です。「火の用心!」の掛け声とともにコンコンと拍子木を打って回るわけですが……これがまったくサマになりません。

寒さのあまり、いい加減になっていく夜回り

  • 拍子木は着物の袖に仕舞い込んだまま打つので、まったく響かない
  • 鳴子は面倒くさいので紐を帯につけてぶら下げ、膝で打つだけ
  • 金棒は地面を引きずるのでほとんど音がしない
  • 寒すぎて誰も「火の用心!」と声を出さない

見かねた月番の旦那が拍子木係の歌のお師匠さんにお願いすると、「火の用心!」ではなく「ひ〜の〜よう〜じん」と長唄(ながうた)調になってしまいます。鳴子係の旦那に頼めば今度は都々逸(どどいつ)調に。こんな調子で何とか番小屋までたどり着き、次の班にバトンタッチです。

後半の見どころ:大人の楽しみと粋なオチ

秘密の鍋と酒

冷え切った体を温めようと火鉢に手をかざしていると、一人が「出掛けに娘が持たせてくれた」と瓢箪(ひょうたん)に入ったお酒を取り出します。

月番の旦那は「ここをどこだと思ってるんだい」と一応たしなめますが……。

「辰っつあん、土瓶のお茶を捨ててお酒を移しておきなよ。冷で飲んだら体に毒だから燗(かん)にしていただこう。土瓶に入れておけばお役人が来たってわかりゃしないよ。実は私も持ってきたんだよ」

さらにもう一人が「あっしは酒の肴に猪(しし)の肉を持ってきました」と言い出します。「鍋がないじゃないか」と言うと、袢纏を脱いで見せると背中に鍋が括りつけてある。

こうして酒も鍋も揃い、番小屋で獅子鍋(猪鍋)をつついて回し飲みをするという、すっかり宴会になってしまいます。

粋なオチ:「二番を煎じておけ」

いつの間にか酔いもまわり、都々逸を歌いながら意気揚々としていると、戸を叩く音がします。

月番の旦那が「犬でも来たのだろう」と「シッシッ」と追い払おうとすると、さらに激しく戸を叩いて「番はおるか!早く戸を開けよ!」。

なんとこのタイミングでお役人が見回りにやってきてしまいました。

一同は慌てて土瓶と鍋を隠して戸を開けます。

お役人:「戸を叩いた時にシッシッと申したな」
旦那:「滅相もございません。寒いので火(し)をつけようと申したのでございます」

苦しい言い訳ですが、お役人はさらに「先ほど土瓶を隠したな」と畳み掛けます。仕方なく土瓶を出すと、

旦那:「風邪気味でして、煎じ薬を飲んでおりました」
お役人:「そうか、ならば拙者もその煎じ薬とやらをもらおうか」

そう言ってお酒をグイっと飲み干します。「これは本当に効くのか、もう少し試してみよう」と、さらにぐいぐいと飲み続け、鍋も出させてぺろりと平らげてしまいます。

旦那:「もう煎じ薬がございません」

お役人:「拙者は一回り見回ってくる。それまでに二番を煎じておけ

「二番煎じ」とは、一度使った茶葉や薬草を再び煮出すこと。薄くなっても、また飲む。お役人が「二番を煎じておけ」と言うオチが、噺のタイトルとかかっています。

二番煎じの面白さのポイント

  • 前半:寒さで崩れていく夜回りの滑稽さ
  • 後半:大人たちが番小屋でこっそり楽しむ宴会の温かさ
  • オチ:お役人がお酒と知りながらあえて「煎じ薬」と乗っかる粋さ
  • 咎めずに「二番を煎じておけ」と言う、立場をわきまえた大人の対応

お互いの立場をわきまえながら、うまく折り合いをつける大人の粋さ。これが落語のいいところです。

実際に聴いた感想:恵比寿ルルティモ寄席2021

この「二番煎じ」を聴いたのは「恵比寿ルルティモ寄席2021」です。三遊亭兼好(さんゆうてい けんこう)さんが高座にかけました。

兼好さんは笑点でおなじみの三遊亭好楽師匠のお弟子さんです。この日は「春風亭一之輔」「桃月庵白酒」「橘家文蔵」という豪華な顔ぶれの落語会でした。

演じる時間はおよそ40分と、落語の中では割と長めの一席でした。

兼好さんの話のリズムと描写が素晴らしく、本当に5人の旦那衆がそこにいて夜回りしている情景が浮かんでくるのです。「落語を聴く」というより「落語を観る」という表現がぴったりと感じるほどです。

お酒を飲むシーンは本当においしそうで、観ているこちらも飲みたくなります。寒い冬の夜に、温かい鍋をつついて一杯やる……それだけでもう幸せそうで。

ぜひ、寄席やホール落語で生の「二番煎じ」を聴いてみてください。

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