今回のあらすじは「厩火事(うまやかじ)」です。落語には、いくつかのカテゴリーに分かれます。
落語には滑稽噺・人情噺・怪談噺などの古典落語と現代の落語家さんが創作した新作落語があります。
こちらでは主に古典落語のあらすじを紹介しています。
今回は、夫婦の絆を描いた「厩火事(うまやかじ)」という話です。
目次
厩火事 あらすじ
厩火事 登場人物
登場人物:お崎さん(髪結の女房)、お崎さんの亭主、夫婦の仲人
噺に出てくる言葉
落語には、現代では使われなくなった言葉や職業などが出てきます。今回の厩火事に出てくる、ちょっと難しそうな言葉を説明します。
厩(うまや)
いまで言うところの「馬小屋」です。
髪結(かみゆい)
現代でなら「理容師さん・美容師さん」でしょうか。お客さんのところに出張して髪を結ってあげていたそうです。結構稼ぎのいい職業だったようです。
唐土(もろこし)
中国のこと。当時は唐土と呼んでいました。
幸四郎(こうしろう)
歌舞伎役者の松本幸四郎のこと。
あらすじ
お崎さんは「髪結」の仕事をしており、亭主も同業者。しかし、亭主の方は最近ほとんど働かずに昼間から家で酒を飲んでる始末。
夫婦は女房が亭主よりも7歳年上で夫婦になって8年ほど経っている。子供はいないが、女房から見たら亭主は子供のようなもの。
仕事が忙しくて帰りが遅いと、変な勘繰りをされた上に怒鳴られて、挙句の果てに夫婦喧嘩に発展。最近はこの夫婦喧嘩も絶えなくなり、遂にお崎は仲人のところに相談にやってくる。
客商売していることも影響しているのか、とにかくよく喋るし、ちょっと勝気な性格の女房は、仲人に亭主の不満をぶちまけて、遂には「別れる」と切り出す。この時点で「別れる」気などないが、ついつい愚痴が勢いあまって口から出てしまった。
とはいえ、仲人はなだめてくれると思ったら大間違い。なんと、別れる事を進めてきたんです。
お前さんのところの亭主は、お崎さんが働いているのに昼間から仕事もしないで酒を飲んでる。などなど亭主の悪いところばかりを言ってくる。
そもそも別れる気がないお崎さんからしたら面白くもなんとも無い。さっきまで亭主の愚痴を溢していたのに、今度は亭主のいい所を話だす。優しいだの人情があるだのなんだかんだと惚気だす。
そこで、仲人は人心について話を始めた。
孔子のたとえ
孔子は一頭の白馬を大切にしていました
ある日、孔子の留守中に厩が火事になってしまいました。
家来は必死になって白馬を救おうとしましたが、白馬を死なせてしまいました。
帰宅した孔子は、事の顛末を聞き家来が無事だったことを喜び、馬の事については一切何も言わなかった。
仲人は、本当の人の偉さというのは、こういう時にわかるものだと言いました。
そしてもう一つ話を続けました。
瀬戸物に凝っているある主人が、お客様に高価な瀬戸物を見せた後、片付けを奥さんに頼みました。
奥さんは、慎重に片付けをしていましたが誤って瀬戸物が転げ落ちました。
主人は、奥さんのことよりも瀬戸物が壊れていないか心配。
これが原因で奥さんは実家に戻ってしまいました。
この話が世間に知れ渡り、未だに主人は独り者。
不人情とはこういうことだと、仲人が説明しました。
これを聞いたお崎は、自分の夫も瀬戸物に凝っていることを仲人に伝えた。
仲人は、大事な瀬戸物を壊して女房とどちらを大事にするか試してみると言いと諭す。
お崎が家に帰ると、夫は夕食に支度をしていた。
これはチャンスと、夫の大事な瀬戸物を転んだふりをして、大げさにひっくり返しみました。
すると、夫は瀬戸物に目もくれず女房のお崎のもとに駆け寄り、大丈夫か?けがはないか?と尋ねました。
お崎は「そんなにあたしが大事かい?」と聞くと、
「当たりめぇじゃねーか!お前が怪我したら、明日から遊んで酒も飲めやしねぇ」
微妙なオチですね。女房が大事なのは本当ですが、その理由がなんとも言えませんね。
それにしても、当時の髪結いの仕事は、かなり稼ぎがいい仕事だったようです。
今の時代なら、稼ぎもなく昼間から遊びほうけている夫を養う奇特な女性はいませんね。
コメント